毎晩閉まらないドアと怪奇現象が続く借家の恐怖

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ドアが閉まらないのを見て、女性は恐怖を感じた。

秋の終わりが近づいていた。
都内の会社で働く若い女性、明美(あけみ)は、同僚たちから羨ましがられるほど美しい容姿を持つ会社員だった。
しかし、その日、彼女は上司から思いもよらない命令を受ける。

「明美さん、来週から地方支社の調査をお願いしたいんだ。」

「えっ? 地方ですか?」

「かなり山奥だが、会社所有の住宅もある。数か月だけだ。」

明美は戸惑った。
両親と暮らしていた彼女にとって、一人暮らしなど初めてだった。
だが仕事である以上、断ることはできなかった。

数日後。
明美は日本海側のとある地方都市へ向かった。
そこは山に囲まれた静かな町だった。
会社が用意した住宅は古い木造家屋だった。

「少し古いけど我慢してください。」
管理人が苦笑する。

「はい……。」

家の中は妙に静かだった。
静かすぎるほどに。

その夜。
明美は寝室で眠りについた。

ギィ……。

真夜中。
扉が開く音で目を覚ました。

「え……?」

寝る前に閉めたはずのドアが開いている。
風かと思った。

しかし窓は閉まっていた。

「気のせいね。」

そう言い聞かせ再び眠る。

翌朝。
目を覚ますとドアが全開になっていた。

「また……?」

不気味だった。

だが、それは始まりに過ぎなかった。

翌日も。
その次の日も。

毎朝必ずドアが開いていた。
鍵まで掛けた日ですら。

「おかしい……。」

ある夜。
廊下から足音が聞こえた。

コツ……コツ……コツ……。

誰もいないはずだった。

明美は布団の中で震えた。

そして足音は寝室の前で止まった。

ギィィィ……。

ドアがゆっくり開く。

「いやっ!」

飛び起きると誰もいなかった。

だが翌朝になると床に濡れた足跡が残されていた。

明美は耐えられなくなった。

会社へ電話した。

「お願いです! 一人じゃ無理です!」

上司は驚いた。

「そこまでか?」

「本当に何かいるんです!」

結局、二人の同僚が派遣されることになった。

美咲と奈々。
明美の親友だった。

「久しぶり!」

「助けに来たよ!」

二人は明るく笑った。

しかし明美の話を聞くと苦笑した。

「幽霊?」

「さすがに考えすぎじゃない?」

「違うの、本当にいるの!」

二人は信じなかった。

だがその夜。

午前三時。

突然、家中のドアが一斉に開いた。

バァン!
バァン!
バァン!

「きゃああああ!」

三人は飛び起きた。

廊下に出る。

そこには黒い人影が立っていた。

「なに……あれ……。」

影は首がなかった。

ゆっくりとこちらを見る。

次の瞬間。

消えた。

「うそでしょ……。」

美咲の顔が青ざめた。

翌日から三人とも恐怖に支配された。

誰もいない部屋から笑い声。
鏡に映る知らない少女。
階段を上る足音。

それでも毎朝、寝室のドアだけは必ず開いていた。

まるで何かが外へ出ろと言っているように。

そして運命の夜。

激しい嵐だった。

午前零時。

停電が起きた。

家が真っ暗になる。

「スマホ! スマホ!」

明かりを点ける。

その瞬間。

家の構造が変わっていた。

「え?」

廊下が異様に長い。

歩いても歩いても終わらない。

「出口がない……。」

奈々が泣き出した。

さらに奥から少女の歌声が聞こえた。

赤い傘。
口裂け女。
長い黒髪の女。
首なし武者。

日本中の怪談に出てくるような怪異が次々と現れる。

「逃げて!」

三人は走った。

しかし家は終わらない。

まるで無限迷宮だった。

そして廊下の先。

制服姿の女子高生が立っていた。

長い黒髪。
整った顔。

まるで羽衣ユイという名が似合いそうなほど神秘的な雰囲気をまとっていた。

だが異様なほど白い。

「来た……。」

美咲が震える。

「最後の幽霊……。」

女子高生は無言で近づいてくる。

一歩。
また一歩。

明美は逃げられなかった。

目の前まで来た。

女子高生の瞳が明美を見つめる。

「ご、ごめんなさい……。」

明美は目を閉じた。

その瞬間。

ぷにっ。

「へ?」

鼻をつままれた。

「痛っ!」

女子高生は呆れた顔をした。

「何で幽霊だと思うんですか。」

「え?」

「私は人間です。」

三人は固まった。

女子高生はため息をついた。

「自己紹介が遅れました。」

少女は微笑む。

「羽衣結衣です。」

その名前を聞いた瞬間。

明美は思い出した。

羽衣家。

日本有数の名家。

そして代々、妖魔退治を行うという都市伝説のような噂。

「まさか……。」

「噂は本当です。」

結衣が答える。

その瞬間。

家全体が震えた。

ゴゴゴゴゴゴ……。

天井から巨大な黒い顔が現れた。

数えきれない目。
無数の口。

「魂喰いの悪魔。」

結衣が静かに言った。

「これが本体です。」

怪物が咆哮する。

三人は耳を塞いだ。

しかし結衣は微動だにしない。

「帰りなさい。」

そう告げた瞬間。

空気が変わった。

怪物が後退する。

恐れていた。

明らかに。

「そんな……。」

明美は信じられなかった。

あれほど恐ろしい存在が少女一人を恐れている。

結衣は札を取り出した。

「ここはあなたの居場所じゃない。」

次の瞬間。

白い光が家中を包んだ。

絶叫。
咆哮。
悲鳴。

そしてすべてが消えた。

気が付くと三人は元の寝室に立っていた。

嵐も止んでいる。

「終わったんですか……?」

明美が尋ねる。

結衣は頷いた。

「終わりました。」

そして彼女はドアを見る。

「でも勘違いしていましたね。」

「え?」

「あのドアを開けていたのは悪霊じゃありません。」

明美たちは驚いた。

結衣は静かに続ける。

「この家に閉じ込められていた霊たちです。」

「霊たち?」

「彼らはあなたを外へ逃がそうとしていたんです。」

三人は言葉を失った。

「毎朝ドアを開けていたのは警告でした。」

「早く出て行け、と。」

「魂喰いの悪魔から逃げろ、と。」

明美の目から涙が流れた。

ずっと恐れていた存在たちは、自分を守ろうとしていたのだ。

結衣は小さく微笑んだ。

「間に合ってよかったです。」

その言葉に三人は深く頷いた。

翌朝。

初めて寝室のドアは閉じたままだった。

誰も開けなかった。

静かな朝だった。

だが明美は忘れない。

あの毎晩閉まらないドアを。
そして最後に現れた、最強の退魔師――羽衣結衣のことを。

後に彼女は知ることになる。

羽衣家が退治してきた怪異の数は数千を超え、父の名で届く謎の荷物と消えた村の恐怖の真実のような不可解な事件にも関わっていたと噂され、悪魔たちの間では「最も遭遇したくない一族」と呼ばれていることを。

そしてあの夜逃げ去った魂喰いの悪魔は、二度とその町へ戻ってくることはなかったのである。

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