学校のトイレで直美が遭遇した花子さんの恐怖と呪いの真実

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学校のトイレで幽霊の花子さんと遭遇

放課後の学校トイレに潜む花子さんの怨霊の秘密

私の名前は直美(なおみ)。都内の普通の高校に通う、ごく平凡な女子高生だ。
だけど、ある日の放課後を境に、私の「日常」は静かに崩れていった。
すべての始まりは――学校のトイレだった。

放課後の校舎は人影が少なく、廊下には掃除当番の生徒たちの声が遠くに響くだけ。
私は親友の真紀と教室の掃除をしていたが、急にトイレに行きたくなった。

「ねえ真紀、ちょっとトイレ行ってくる。」
「今? この時間のトイレ、やめときなよ。幽霊の噂、知らないの?」
「まさか。そんなの子どもの話でしょ。」

真紀は肩をすくめたが、私は笑いながらモップを置き、静かな廊下を歩き出した。
夕暮れの光が差し込む廊下は薄暗く、窓に映る自分の姿がぼやけて見える。
トイレのドアを開けると、ひんやりとした空気が肌を撫でた。

「誰かいる?」
声をかけたが、返事はない。
三つ並んだ個室の一番奥――扉が少しだけ開いていた。
心臓が嫌な音を立てる。私は恐る恐る近づき、扉の隙間から中を覗いた。

カタン――と何かが落ちる音がした。
「……風かな?」
そう思って振り返った瞬間、鏡の中の自分の後ろに、誰かが立っていた。
赤いスカートを履いた少女。
肩までの黒髪、白いブラウス、そして血のように赤い唇。

「えっ……!」
振り返ると、誰もいない。鏡の中だけに少女がいる。
彼女はゆっくりとこちらを見つめ、微笑んだ。

「わたし……花子さん。」

その声は、耳の奥に直接響くようだった。
足がすくんで動けない。
鏡の中の彼女が、一歩、こちらに近づいた気がした。

「やめて!」
私は叫びながら廊下へ飛び出した。
教室に戻ると、真紀が心配そうに近づいてきた。
「どうしたの? 顔真っ青だよ!」
「トイレに……誰かいたの。赤いスカートの女の子……!」

真紀は眉をひそめて、
「まさか、本当に見たの?」と半信半疑だった。
けれど、その夜から私は奇妙な出来事に悩まされるようになった。

家に帰って宿題をしていると、机の下から水が滴る音がする。
床を見ると、小さな足跡が濡れて光っていた。
窓を閉めても、水音は止まらない。
そして、その足跡は私の部屋のドアの前で途切れていた。

「お母さん、床が濡れてるんだけど……」
「なに言ってるの? そんなものないわよ。」
母は笑っていたが、私が見た光景は幻ではなかった。

次の日、教室の後ろの窓に、誰かの顔が映った。
私は驚いて後ろを振り向いたが、誰もいない。
授業中も、ノートに水滴が落ちる音が聞こえる。
まるで、どこにいても“あの子”がついてきているみたいだった。

「ねえ真紀、私……何かに取り憑かれてるかも。」
「本気で言ってるの? 夢でも見たんじゃない?」
「違うの、ほんとに……」

そのとき、教室のスピーカーが突然ジジジ……と鳴った。
『なおみ……』
スピーカーから聞こえたその声に、教室中が静まり返った。
誰も操作していないのに、マイクのスイッチが勝手に入っていた。

「今の……何?」
「まさか、トイレの花子さん……?」

私は震える手で耳を塞いだ。

その日の放課後、私は意を決して図書室に向かった。
古い資料を調べてみると、この学校には戦後から続く怪談があった。
――昭和二十年代、この学校のトイレで一人の少女が行方不明になった。
名前は「花子」。
いじめを苦にして自ら命を絶ったとも、誰かに殺されたとも言われている。
以来、トイレで彼女の名前を呼ぶと現れる、という噂が絶えなかった。

しかし、ある一冊のノートが目に止まった。
『学校怪談調査記録』と書かれた古びたファイルだ。
ページを開くと、白黒の写真が挟まっていた。
セーラー服の少女が笑って写っている。
そして、その隣には――幼い私がいた。

「え……なんで私が?」

記憶の奥底が刺激される。
小学生のころ、母の友人が働くこの学校に一度遊びに来たことがあった。
そのとき、トイレで迷って泣いていた私に、優しく声をかけてくれた少女がいた。

「泣かないで。もうすぐお母さん来るよ。」
その子が……花子さんだったのだ。

でも、私は彼女が涙を流して「助けて」と言った瞬間、怖くなって逃げてしまった。
その日を最後に、彼女の姿は消えた。

――もしかして、あの日、彼女は本当に助けを求めていたのだろうか?

その夜、夢の中で彼女が現れた。
「なおみ……あの日、どうして逃げたの?」
「ごめんなさい……ごめんなさい……!」
「わたしね、あなたをずっと探してた。」

彼女は静かに泣きながら、私の手を握った。冷たい、水のような手だった。
「あなたは、わたしを置いて行った。でも、今度はわたしが置いていかない。」
そう言って微笑む花子さんの目は、もうこの世のものではなかった。

私は叫びながら目を覚ました。
ベッドの下からポタポタと音がする。覗き込むと、水たまりの中に白い手が浮かんでいた。
「ひっ……!」
急いで部屋のドアを開けたが、そこにも水の跡が続いていた。

その夜から、携帯電話に「トイレに来て」というメッセージが何度も届いた。
発信者は表示されない。
電源を切っても、再びメッセージが届く。

次の日、私は担任の先生に相談した。
「先生、この学校に“花子さん”のこと、何か知ってますか?」
先生は表情を曇らせ、しばらく黙っていた。
「……昔ね、同じ名前の子がいたんだ。君が小さい頃、この学校で……」
「その子、どうなったんですか?」
「ある日突然いなくなってね。警察にも届けたけど、見つからなかった。」

――そして先生は続けた。
「最後に彼女を見たのが、当時遊びに来ていた小さな女の子だったらしい。」
「……それ、私です。」

先生は息を呑んだ。

放課後、私はトイレに向かった。もう逃げないと決めた。
鏡の前に立つと、背後から水滴の音がした。
「なおみ……やっと来てくれた。」
鏡の中に花子さんが立っていた。涙のような水が頬を伝っている。

「ごめんね、ずっと……」
「いいの。でも、もう一人じゃいやなの。」

花子さんは私に手を伸ばした。
その瞬間、トイレ全体が水に包まれるように波打ち、視界が真っ暗になった。

――気づくと私は自分の部屋にいた。
でも、鏡に映る自分の後ろには、赤いスカートの花子さんが微笑んでいた。

「ねえ、なおみ。今度こそずっと一緒にいようね。」

次の朝、母が私の部屋に入ると、床一面が濡れていたという。
机の上には、古いトイレの写真。
そこには、二人の少女が並んで笑っていた。
一人は確かに私。もう一人は、赤いスカートの花子さん。

それから数日後、学校で新しい噂が流れ始めた。
「夜のトイレで“なおみ”って名前を呼ぶと、鏡に二人の女の子が映るんだって。」
「一人は赤いスカートの花子さん、もう一人は黒髪の女の子。二人で笑ってるらしいよ……」

静まり返った校舎のトイレ。
今も、夜になると、どこからか聞こえるという。
――コン、コン、コン。
「入ってる?」

その声に返事をしてはいけない。
返した瞬間、あなたもきっと“もう一人”になるから。

トイレの鏡の中では、今日も二人の少女が微笑んでいる。
赤いスカートの花子さんと、かつて普通の女子高生だった直美が――。

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