高知市の病院で若い看護師が遭遇した鬼の怪異と恐怖の真相物語
高知市医院に潜む鬼の霊と看護師ユイを襲う怪異の全記録
高知市の中央に佇む古びた総合病院――その建物は昼間こそ患者や見舞客で賑わっているが、夜になるとどこか重く湿った空気に包まれていた。廊下の蛍光灯はところどころ点滅し、誰もいないはずの場所から時折聞こえる物音。
その病院に新しく配属された看護師、結衣(ゆい)は、若さゆえのやる気と不安を胸に働き始めたばかりだった。新人らしく緊張しつつも、先輩たちに支えられ、患者と向き合う日々。しかし――就職して三日目の夜から、彼女の日常は急激に狂い始めた。
◆◆◆
◆三日目 深夜――異音の正体
その夜、ナースステーションで記録整理をしていた結衣は、静まり返った病院に残る微かな音を聞き逃さなかった。
“ガ…ガガガ……ガリ……”
金属を引きずるような、硬いものを擦るような音。
「え……? 調整中の機械なんてあったっけ……?」
不思議に思い、椅子から立ち上がって振り返る。
しかし廊下には誰もいない。ただ暗闇がどこまでも続くだけ。
「……気のせいかな。」
結衣はそう呟いて自分を落ち着けようとした。だがその瞬間――
「……ユイ……」
低くくぐもった声が耳元で囁いた。
「ひっ……!」
息が詰まるほどの恐怖。しかし振り返っても、そこには誰もいない。ただ、闇が揺れているように見えた。
数秒後、結衣は震える指で胸元を押さえながら席に戻った。その夜は結局、何も分からぬまま勤務を続けるしかなかった。
だが――それはほんの“序章”に過ぎなかった。
◆◆◆
◆四日目――廊下に現れた“手”
勤務中、患者の見回りをしていた結衣は、薄暗い廊下を歩いている最中に突然足元に冷たい何かが触れたのを感じた。
「え?」
見下ろすと、そこには――
床から伸びる黒い手。
まるで自分の足首を掴もうとしているかのように、不自然に、ぐにゃりと曲がりながら伸びてきていた。
「きゃぁっ!!」
反射的に飛びのいた瞬間、その手は煙のように消えた。
呼吸は荒くなり、鼓動は乱れ、足は震えて動かない。
「な……何なの……?」
震える声が廊下に虚しく響いた。
自分の見間違いではない確信だけが心に残る。
ナースステーションに戻ると、先輩の佐伯が怪訝そうな顔で結衣を見た。
「結衣ちゃん、大丈夫? 顔が真っ青よ。」
「さ、さっき……廊下で黒い手が……。」
佐伯の表情が一気に固まった。
「……やっぱり、見えちゃったのね。」
「え……?」
「この病院、昔から“鬼”が出るって噂があるの。見える人はごくわずか。でも……見えた人は必ず狙われるのよ。そういえば、琵琶湖の悪霊が解き放たれ八鹿村を襲う恐怖と女子高生めぐみの絶望の物語 のように、他の地域でも強い怨霊の噂は絶えないわ。」
その言葉は冗談ではなかった。佐伯の目は真剣そのもの。
「鬼……?」
「そう。死亡したある患者がね……死ぬ直前に“鬼になってやる”って呪いのように叫んだって話があって。」
「そんな……ただの噂ですよね?」
「……信じたいならそう思っておきなさい。でも見える人は――」
佐伯は唇を噛んだ。
「必ず呼ばれる。」
◆◆◆
◆五日目――鬼が家まで来る
その夜、結衣は自宅でのんびりと過ごすつもりだった。テレビを点け、シャワーを浴び、疲れを癒そうとベッドに身をもぐらせた。しかし眠りについた頃――
“ドン……ドン……ドン……”
玄関のドアが叩かれる音で飛び起きた。
時計を見ると午前3時。こんな時間に誰が?
ドアスコープを覗く。
……誰もいない。
だが、次の瞬間――
“コン……コン……”
今度はベランダの窓が叩かれた。
「え……嘘でしょ……?」
恐る恐るカーテンを開けた結衣の目に映ったのは――
柵にぶら下がり、こちらを覗き込む巨大な影。
赤い瞳がギラリと光った。
口元には異様に長い牙。皮膚はボロボロに剥がれ、全身が人間とは思えないほど歪んでいた。
「う……うそ……いやぁぁぁ!!」
鬼は窓ガラスを拳で叩きつけた。
しかし、なぜか割れない。まるで目に見えない壁があるかのように。
鬼は低く笑い、“見ている”ことを示すように歯を剥き出し、ゆっくりと闇へ消えていった。
結衣は震える手で床を掴み、声も出せないほど恐怖に支配された。
◆◆◆
◆六日目――呪われたカルテ
翌日、出勤した結衣を佐伯が慌てた様子で呼び止めた。
「結衣ちゃん、ロッカー……見て。」
不安を抱えながらロッカーを開けると、中には一枚の古びたカルテが挟まれていた。
――患者名:不明(鬼患者)
――症状:精神錯乱、他傷行動
――備考:死亡後、遺体消失
「こんなカルテ……見たことない。」
その瞬間、カルテの裏に赤黒い血文字が浮かび上がった。
『ユイ ミツケタ』
「きゃっ!!」
結衣は思わず後ろに倒れ、佐伯が慌てて駆け寄った。
「だから言ったのよ……呼ばれてるのよ、結衣ちゃん……。」
◆◆◆
◆七日目――決意と恐怖
逃げても意味がない。家にも現れ、病院でも追ってくる。
結衣は決断した。
「私……鬼の正体を知りたい。逃げてばかりじゃ終わらない。」
佐伯は目を見開いた。
「危険よ。本当に死ぬわよ?」
「でも、このままじゃ……私、もっと怖い。」
結衣は震える唇で笑った。
◆◆◆
◆地下旧病棟へ――恐怖の核心
鬼患者が死亡したとされる場所――地下の旧病棟。封鎖された区域で起きた怪異としては、封鎖病棟に響く母の叫びと消えた実習生 のような事件も知られている
今は使われておらず、夜間は立ち入り禁止になっている。
深夜、結衣は懐中電灯を握り、ひっそりと扉を開けた。
“ギィィ……”
湿った空気が流れ、階段の先は闇に沈んでいる。
下りるたびに、後頭部に視線を感じた。
やがて、旧病棟の廊下にたどり着く。
そこは壁の塗装が剥げ、古い血痕のような跡が残り、明らかに現在の病院とは異なる空気を放っていた。
「ここに……いるんだよね……?」
不安を押し殺しながら進むと――
“ドンッ!!”
背後で扉が閉まった。
驚いて振り返った結衣の前に――
赤い光が二つ、暗闇の奥に浮かんだ。
鬼が姿を現した。
腐りかけた皮膚、異様に長い手足、狂気を帯びた瞳。
「……ユイ……」
最後の“獲物”を見つけたかのように、鬼はにじり寄ってくる。
「な……何で私を……?」
「……ミタ……ユイ……」
鬼は途切れ途切れに言葉を発し、結衣の頭に手を伸ばした。
触れた瞬間、結衣の意識が一気に吸い込まれる。
◆◆◆
◆鬼の記憶――悲劇の真相
結衣の脳裏に、鬼となった“元患者”の記憶が焼き付いた。
彼は家族に見捨てられ、重い病気で苦しみながら入院していた。しかし医師の誤診により必要な治療を受けられず、次第に精神が崩壊。
助けを求めても、看護師たちは彼を恐れて部屋に近づかず、孤独なまま死亡。
そして――
『ユルサナイ……オマエラヲ、ゼッタイニ……』
その強烈な怨念が、彼を鬼に変えた。
最後の記憶には、自分の息子の姿もあった。
小さな手、小さな声――。
「……パパ……?」
彼の死と同時に、その子供も消えたという噂まで残されていた。
記憶から解放された結衣の前で、鬼は弱々しく呟いた。
「……タス……ケテ……」
先ほどの狂気は消え、まるで迷子の子供のような瞳だった。
「あなた……本当は助けを求めていたんですね……。」
結衣は鬼の手を握った。
鬼は目を閉じ、静かに霧となって消えた。
こうして病院は平穏を取り戻したかに見えたが――。
◆◆◆
◆一ヶ月後――訪れる新たな影
病院の怪奇現象は止まり、結衣も以前のように働けるようになった。
日常に戻ったはずの生活。
しかしある夜、帰宅した結衣は異様な気配に気づいた。
“コン……コン……”
また窓が叩かれた。
「ま……また……?」
恐怖に震えながらカーテンを開けると――
小さな鬼がそこにいた。
大きな涙を流しながら、結衣に手を伸ばす。
「……ママ……タスケテ……」
「ま、待って……あなたは誰……?」
小さな鬼はすすり泣きながら言った。
「ボク……アノヒトノ……コドモ……」
「……え……?」
「パパ……サミシイ……イタイ……タスケテ……」
結衣の顔色が一気に変わった。
――鬼の“家族”もまた、この世を彷徨っていた。
親の怨念は消えても、子供の怨念はそのままだったのだ。
結衣が呟いた。
「まだ……終わってない……。」
小鬼はゆっくりと結衣の方向へ手を伸ばす。
その瞳には悲しみだけではなく、深い深い恨みが渦巻いていた。
「……ユイ……ボク……ツレテッテ……」
その声に、結衣は背筋が凍った。
本当の恐怖は、ここから始まるのかもしれない。
終わったと思われた悪夢は――
まだ、終わりではなかった。

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