SNSの悪夢
SNSの悪夢:拡散される呪い
「拡散希望。この投稿を見た人は、24時間以内に同じ内容を自分のSNSに投稿しないと――死にます。」
東京都内の大学に通う女子大生・美咲(みさき)は、SNSで人気のインフルエンサーだった。日々の生活、カフェ巡り、ファッション投稿で何千もの「いいね」を稼いでいた。
ある日、深夜に彼女のフォロワーの一人が、不可解な投稿をした。
「#呪いの投稿 #拡散希望 見た人はシェアしないと死ぬ」
冗談か都市伝説だと思い、美咲は軽く笑いながらスクロールを続けた。
「またこういうチェーン投稿か……平成の時代かよ」
しかし、その投稿にリプライしていたフォロワーたちのアカウントが、次々と「存在しないユーザー」に変わっていくのを見て、彼女は背筋が凍った。
「え……全部消えてる?アカウントごと消された……?」
そして翌朝、ニュースアプリで見た記事の見出しに、彼女は目を見開いた。
「SNS投稿後、都内で3人謎の死。スマホに謎の映像」
映像とは、例の「呪いの投稿」と酷似していた。美咲は動揺した。
「まさか……本物なの?」
彼女は親友の理沙(りさ)に電話した。
「ねぇ、昨日の“呪いの投稿”見た?ちょっとやばいかも……」
「え?あの変なやつ?ただの悪質ないたずらでしょ。気にしすぎ」
「でもさ……その後に投稿した人、3人死んだって……」
「え……?」
理沙も次第に不安になり、2人はその日の夕方、カフェで落ち合うことにした。
「ほら、これが投稿。文章も画像も全部一致してるんだって……」
美咲がスマホを差し出すと、理沙は怪訝な顔をした。
「でも、美咲、あんたこの投稿……“いいね”してるよ」
「え?してないよ、そんなの……」
スマホを見返すと、確かに「いいね済み」と表示されていた。
「ええ!?いつ……!?」
そしてその夜、美咲のスマホに通知が届いた。
《あなたはこの投稿を見ました。拡散してください。タイムリミット:23時間48分》
画面がバグったように一瞬ノイズが走り、次の瞬間、スマホのカメラが勝手に起動した。
画面には、部屋の隅で“何か”が立っているのが映っていた。
「いやっ!うそ、やめて、やめてって!!!」
振り返ったが、そこには誰もいなかった。だが、スマホにはまだその“何か”が映っていた。
翌日、理沙から連絡が来た。
「美咲……昨夜、変な夢を見た。あの投稿の女が……私の部屋に立ってたの。真っ黒な顔で、口が裂けてて……」
「私もだよ……いや、私は夢じゃなくて、スマホに映ったの」
2人はこのままでは危ないと判断し、「呪いの投稿」について調べ始めた。
ある掲示板にたどり着くと、同様の被害者の書き込みが多数見つかった。
「最初に投稿されたのは2018年、山梨県の女子高生が“黒い口裂け女”の映像と共に投稿し、行方不明に」
「投稿を見てしまった者は、タイムリミット内に“次の犠牲者”を見つけて拡散しないと、呪いが本人に返ってくる」
「つまり……誰かに回さなきゃいけないってこと?」
「でも、それって……誰かを犠牲にするってことじゃない……」
美咲は苦悩した。自分だけ助かるために他人を巻き込むことはできない。でも、何もしなければ……
その晩、理沙が突如失踪した。
警察に通報したものの、部屋には争った形跡はなく、ただ一枚のスマホが床に残されていた。画面には、例の黒い女の顔が静かに映っていた。
「いやぁああああ!!」
その瞬間、美咲のスマホに最後の通知が来た。
《リミット終了まで:残り10分》
彼女は手が震えながらも、決意した。
「……わたしはもう、逃げない。終わらせてやる」
彼女は配信を開始した。生配信の画面に、例の呪いの投稿を表示しながら語り始めた。
「これが、呪いの投稿の正体です。これを見て、感じたことをそのままコメントしてください」
「“見た人が死ぬ”なんて、もう終わりにしないと……!」
だが、コメント欄は荒れ、煽る者、嘲笑う者、そして突然、チャット欄に現れた名前「Yurina_Akagi」
「見たね」
画面が真っ黒になり、配信が強制終了された。
それ以来、美咲のアカウントはログイン不可となり、彼女の姿も、どこにも見つかっていない。
だがその後も、SNS上には定期的に「呪いの投稿」が現れる。内容は少しずつ変わりながらも、共通しているのは——
《この投稿を見た人は、24時間以内に拡散しないと死ぬ》
あなたのタイムラインにも、もう現れていないだろうか?
「#呪いの投稿 #拡散希望」
今、画面の前で読み終えたあなたも——
見たことを、誰かに伝えなければならないかもしれない。
「次は、あなたの番かもしれない……」
……
美咲の失踪から1週間が過ぎた。
彼女のアカウントはログイン不可となったままだが、ある日、SNSに再び“例の投稿”が浮上した。
それは、美咲の名前を使ったアカウントからの投稿だった。
《見た人は24時間以内にこの投稿をシェアしなければ死にます──拡散希望》
しかしそのアカウントのプロフィール写真は、美咲の顔ではなかった。
顔の中心が黒く塗りつぶされ、口元だけが裂けたように笑っている女の顔だった。
この投稿は瞬く間に拡散され、ネット上では再び「呪い投稿の再来」と騒がれ始めた。
特に高校生たちの間で話題となり、好奇心から投稿をリポストする者も現れた。
数日後、千葉県の高校に通う男子生徒・優斗(ゆうと)は、友人からこの投稿をLINEで送られた。
「見てみろよ、これ。ヤバいやつ。見たら死ぬらしいぜw」
軽い気持ちで開いた優斗は、黒い女の顔のGIF動画を見て、最初は冗談だと笑った。
「くだらねぇ。こんなの信じてるやつまだいるんかよ」
だがその夜、彼のスマホが勝手に動き始めた。
LINEの画面に、「美咲_Akagi」からの通知が届いた。
《あなたは見ました。拡散まで、あと6時間54分》
「え……?LINEの友達にこんな名前いないけど……」
恐怖を感じながらも、そのメッセージは削除できなかった。
さらに、部屋の電気が一瞬消え、スマホの画面がノイズ混じりに切り替わった。
そこには、鏡の前に立つ自分と、その背後に映る女の姿が……。
「う、うそ……後ろに……」
振り向いても誰もいなかったが、鏡の中にはまだ女の姿が映っていた。
裂けた口が少しずつ笑い、こちらに手を伸ばしてくる。
翌朝、優斗は学校を欠席した。
母親が部屋を覗くと、彼は床に倒れており、スマホには例の投稿が繰り返し再生されていた。
その後、搬送先の病院で彼は「精神的ショックによる意識混濁」と診断され、会話不能状態に陥った。
病室の壁には、なぜか赤い指で書かれたような跡が残されていた。
《次は、誰?》
──この現象を調査する者も現れ始めた。
オカルト雑誌の記者・倉本慎一(くらもと しんいち)は、独自に「呪いのSNS投稿」のルーツを追っていた。
「この“拡散希望”の起源は、2018年の“赤城百合菜”事件だ。
彼女は失踪直前に、謎の映像をSNSに投稿し、以後行方不明になった。
当時の映像データを精査すると、ノイズの中に奇妙な周波数が混入している。
それは……脳波に影響を与える“視覚催眠”の可能性がある」
倉本は、被害者の1人が残したメモに着目した。
《あの女は画面の向こうから見ている。笑っている。誰かに見せるまで、ずっと付き纏う》
「つまり、この呪いは“伝染”する。映像を見せられた者は、新たな媒介者となり、次の犠牲者を生む」
「しかも、それを拒めば“本人が”食われる仕組み……」
倉本は記録映像を精査していたが、ある晩、彼のオフィスにも異変が起きた。
モニターが突然真っ暗になり、女の笑い声が響いた。
「ヒヒヒヒ……み〜た〜な〜」
翌朝、倉本のデスクにはUSBメモリだけが残されていた。
その中には、1本の映像ファイル。
「拡散用.mp4」
ファイルを再生した者は、全員が失踪または心神喪失状態となったという。
現在もSNS上には、時折現れる謎の投稿がある。
“#拡散希望 #呪い #24時間以内に”
ある匿名アカウントはこう警告している:
「この投稿を見た者は“選ばれた”。
自分の命を繋ぐには、新しい犠牲者を見つけるしかない。
ただし、相手が“映像をちゃんと見る”ことが条件だ。
見る前に閉じられた場合、呪いは元に返ってくる」
では、あなたが今この記事をここまで読んだことは……
“見た”と判定されるのだろうか?
拡散しなければ、どうなるのだろうか?
「#SNSの悪夢」
それは、ただのフィクションだと願いたい。
……スマホの通知音が鳴った。
《あなたは見ました。タイムリミット:23時間58分》

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