都市高速の悪夢

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都市高速の悪夢

都市高速の悪夢──深夜に潜む影の恐怖

「これ、マジでヤバいって……」
午前1時過ぎ、東京湾岸を走る都市高速。助手席の涼太が青ざめた顔で言った。運転席の俺、翔太は無理やり笑みを作った。「大丈夫だって、ナビには何も変な表示ないし、ただの夜道だよ」

二人で夜のドライブを楽しもうと、都心の夜景を見下ろせる高速道路を走っていた。しかし、首都高湾岸線のある区間に差し掛かったとき、異様な静けさが車内を包んだ。

窓の外には、照明の消えた看板、誰も走っていない車線、どこまでも続く暗闇。異様だった。

「なあ、さっきから誰も走ってないよな……こんなに静かなの、普通か?」
「……おかしいな。さっきまで後ろに車がいたはずなのに……」

涼太がバックミラーをのぞいたその時だった。

――ゴンッ!

車体が何かにぶつかったように揺れた。しかし、前にも後ろにも、周囲には何もない。

「おい、今の音……なに?」
「知らねえよ……何も見えなかった」

不安が頂点に達した俺たちは、すぐに最寄りの出口で降りようと決めた。しかし、ナビには「次の出口 4km先」と表示されたまま、変化がない。

4km。ずっと走っているはずなのに、距離は減らない。

「おい翔太、これ、出口……近づいてなくね?」
「……ふざけんな、どういうことだよ」

やがて、ラジオからザーッというノイズが流れ出した。音量を下げようと手を伸ばすと、ノイズに混じって声が聞こえた。

『……もどれ……この道に……のぼるな……』

ゾクリ、と背筋が凍る。

「聞いたか……今の……?」
「ああ、なんだよこれ、なんなんだよ!」

恐怖に駆られた俺はアクセルを踏み込み、出口まで一気に走り抜けようとした。その時、涼太が震える声で叫んだ。

「翔太、前!!!」

ヘッドライトに照らされた道路上に、真っ白な服を着た女が立っていた。髪は乱れ、顔は……なかった。

「うわあああああああ!」

急ブレーキ。車はスリップし、道路の壁に激突した。視界が揺れ、意識が遠のく……。

――……気づけば、車は止まっていた。俺たちは奇跡的に無傷だった。だが、道路上にはもう女の姿はなかった。

「……あれは、なんだったんだ?」
「夢じゃないよな……」

その後、俺たちはようやく出口にたどり着き、高速を降りた。コンビニで休憩しながら、さっきの出来事をネットで検索してみた。すると、信じられない記事が出てきた。

『都市高速湾岸線――深夜1時、出口が消える区間。事故多発地点。白い服の女が現れるという都市伝説あり』

涼太が震える指でスマホを握りしめた。
「……見たの、あの女だよな」
「ああ……あれは……ただの幻覚じゃない」

その夜から、俺たちは高速道路に乗ることをやめた。特に、湾岸線のあの区間には二度と近づいていない。

数ヶ月後、あの夜の記憶を忘れかけていた頃、ふと部屋の窓に目をやった。そこに、あの白い服の女が立っていた。顔は……やはり、なかった。

――都市高速の悪夢は、終わっていなかった。

◇ ◇ ◇

数日後、俺たちはあの出来事を確かめようと再び調査を始めた。怖さはあったが、何もせずにはいられなかった。古い掲示板や地元の噂を調べていく中で、驚くべき話を見つけた。

『昭和62年、湾岸線建設中に死亡事故。作業員の一人が白い制服を着たまま行方不明に。その後、工事現場で不可解な事故が相次ぎ、「白服の女」に関する目撃証言が多数寄せられる』

さらに、俺たちが遭遇した場所には「供養塔」がひっそりと建てられていたという情報も。

「……あそこ、ただの事故現場じゃなかったんだな」
「あの女……今も彷徨ってるのかもな」

ある夜、涼太から連絡が来た。
『夢に出た。高速道路を走ってて、また女が現れた。今度は、俺の名前を呼んでた』

涼太は、それ以来体調を崩し、家に引きこもるようになった。俺も、部屋の隅から視線を感じるようになり、眠れない日々が続いた。

最後に、ある霊媒師に相談した。すると彼は一言、
「……あの道に入った者は、決して無事では済まされません」

都市高速の悪夢。
それは、夜の静寂に潜み、今も犠牲者を待ち続けている。

もう二度と、深夜の高速には乗らない。そう誓ったはずなのに、今、俺の部屋の窓に再び、あの白服の女が……

――終わらない悪夢が、始まろうとしていた。

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