桜の木の亡霊
桜の木の亡霊
日本のある地方に、古くから「呪われた桜の木」として恐れられる一本の桜があった。その木の下で写真を撮ると、必ず奇妙な影が写るという噂が絶えなかった。
「こんな話、本当に信じるの?」 「でも、実際に見た人がいるんだろ?」 「だったら確かめてみようぜ!」
大学生の拓也、真紀、翔平の三人は、肝試しとしてその桜の木がある神社へ向かうことにした。夜の神社は静まり返り、風に乗って桜の花びらが舞っていた。
「これが噂の桜か…?」 「昼間に見たら綺麗なんだろうけど、夜は不気味ね…。」
翔平がスマホを取り出し、写真を撮った。しかし、画面を見た瞬間、顔色が変わった。
「な、なんだこれ…!」
画面には、白い着物を着た女の姿が写っていた。彼女はじっとこちらを見つめ、血のように赤い目をしていた。
「…嘘だろ?こんなはず…。」
突然、木の上からざわざわと音がした。見上げると、無数の黒い影が揺れ、まるで囁くように声が響いた。
『…私ヲ見タ…帰サナイ…』
「逃げろ!!」
三人は必死に神社の鳥居をくぐり、駆け出した。しかし、足音が後ろからついてくる。
「こ、こっちに来る…!」 「お祓いしなきゃ…!」
三人は近くの寺に駆け込み、住職に事情を説明した。住職は険しい顔をしながら、静かに語り始めた。
「その桜の木には、悲しい歴史があるのです…。昔、一人の女が恋人を失い、その桜の木の下で自ら命を絶ったと言われています。その怨念が今も木に宿っているのです。」
「…じゃあ、どうすればいいんですか?」
住職は深くため息をついた。
「彼女の霊を慰めるしかありません。花が散る前に供養をしなければ、あなた方の命も危ない…。」
三人は震えながらも、翌日再び桜の木の下へ向かった。線香を焚き、手を合わせると、どこからか嗚咽のような声が聞こえた。
『…私ハ…一人ジャナイ…?』
桜の花びらがひとひら、静かに舞い落ちる。風が止み、木の影も消えた。
「…これで、終わったのかな。」
しかし、彼らは知らなかった。その桜の木の下には、まだ多くの魂が眠っていることを——。
◆
翌日、拓也のスマホに奇妙な通知が届いた。「新しい写真が追加されました」と表示されている。開いてみると、昨日撮ったはずのない写真がいくつも保存されていた。
そこには、深夜の神社と桜の木、そして白い着物の女が写っていた。彼女は写真ごとに少しずつこちらに近づいているように見えた。
「何だよ、これ…!削除しよう…」
しかし、何度削除しても写真は消えず、むしろ増えていった。
その夜、拓也の部屋の窓の外から、かすかに桜の花びらが舞い込んできた。そして、耳元で囁く声がした。
『…見ツケタ…』
拓也は恐怖で動けなかった。次の瞬間、窓ガラスに白い手形が浮かび上がった。
「ひっ…!!」
慌ててカーテンを閉めたが、外から誰かが覗いている気配がする。心臓が高鳴る中、携帯のバイブ音が鳴った。拓也は震える手でスマホを確認した。
新しいメッセージが届いていた。送り主は不明。そこにはただ一言、
『次ハ…誰?』
恐怖のあまり、拓也はその夜、一睡もできなかった。翌朝、真紀と翔平に相談しようとしたが、二人のスマホも同じ状態になっていた。
「ヤバいよこれ…!どうすれば…!」 「また住職のところに行こう!」
三人は急いで昨日の寺へ向かった。しかし、寺の門の前で足が止まった。
住職が倒れていたのだ。駆け寄ると、彼はかすれた声で言った。
「…もう遅い…彼女は…すでに…。」
「住職!しっかりしてください!」
しかし、彼の顔は恐怖に歪み、最後の言葉を告げると、こと切れた。
「彼女は…次の犠牲者を…探している…。」
その瞬間、遠くから風に乗って桜の花びらが舞い、またあの声が響いた。
『…次ハ…オ前…?』

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