神隠しの真相
神隠しの真相
山間の小さな村には、古くから「神隠し」の伝説があった。村人たちは決して夜に森へ足を踏み入れない。それは、ある場所に行くと二度と戻れないと言われているからだ。
「なあ、本当に行くのか?」 「こんな迷信、信じてられないよ。俺たちの目で確かめようぜ。」
大学生の翔太、涼介、美咲の三人は、村で語り継がれる「神隠しの森」に興味を持ち、夜の探索を決意した。
満月の下、静寂に包まれた森を進む。風もなく、不気味なほど静かだった。
「なんか、変な感じがする…。」 「怖気づいたのか、美咲?」 「違う…でも、誰かに見られてる気がする…。」
彼らが歩みを進めると、突然、霧が立ち込めた。視界が遮られ、気づけば三人は道を見失っていた。
「おい、どこだよここ…。」 「来た道が消えてる…?」
その時、足元に古びた祠が現れた。異様な雰囲気が漂い、祠の前には小さな白い紙人形が並んでいた。
「なんだこれ…?」 「やめとけよ、触るな!」
しかし、翔太が興味本位で紙人形を持ち上げた瞬間——
——ざわ…ざわ…
森の奥から、何かの気配が近づいてくる。木々がざわめき、足音が響いた。
「…逃げろ!」
三人は必死に走った。しかし、美咲が突然悲鳴を上げた。
「キャアアアッ!!」
振り返ると、美咲の姿が消えていた。まるで最初からそこにいなかったかのように。
「美咲!?どこだ!!」
涼介が必死に叫ぶが、返事はない。ただ、風の中に微かに囁く声が混ざっていた。
『…つれていく…』
翔太と涼介は震えながらも、美咲を探すために森の奥へと進んだ。すると、霧の向こうに灯りが見えた。
古びた屋敷が佇み、その中から美咲の笑い声が聞こえた。
「美咲!?いるのか?」 「…ふふ…ここ、すごく居心地がいいよ…。」
二人が恐る恐る中へ入ると、美咲がぼんやりと立っていた。だが、その顔はどこか違っていた。
「おい、大丈夫か…?」
美咲はゆっくりと振り向いた。その目は黒く沈み、まるで別人だった。
「ねえ、一緒に行こうよ…こっちの世界の方が楽しいよ…。」
その瞬間、背後の扉が勢いよく閉まった。そして、屋敷全体が歪むように揺れ始めた。
「逃げるぞ!!」
二人は美咲を引っ張ろうとしたが、彼女は抵抗した。
「いや…私はここに残るの…。」
その時、翔太は気づいた。美咲の背後に、無数の白い手が伸びていることに。
「ダメだ…美咲、戻れ!!」
だが、美咲は笑うだけだった。そして、彼女の身体がゆっくりと闇に溶けていった。
「美咲!!!…うわあああ!!!」
翔太と涼介は気を失う直前、囁き声を聞いた。
『…また、迎えにくるよ…』
◆
翌朝、二人は村の入り口で発見された。しかし、美咲の姿はなかった。警察が捜索を行ったが、彼女は二度と見つからなかった。
それ以来、村の森では新たな噂が囁かれるようになった。
「満月の夜、森の奥で女の笑い声が聞こえるんだってさ…。」
翔太は悪夢にうなされ続けた。美咲が手を伸ばして「こっちにおいで」と囁く夢だった。
ある夜、彼は再び森へ向かった。霧の中に立つ屋敷の灯りが見えた。
「美咲…お前、そこにいるのか?」
彼が一歩踏み出した瞬間、涼介が後ろから叫んだ。
「翔太!行くな!!」
しかし、翔太の姿は霧の中へ消えた——。
そして、神隠しの伝説は、また一つ増えたのだった。

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