髪長姫の呪文
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髪長姫の呪文
駅から二区間の住宅街に居んでいる二人の学生。豊田和輝と水瀬陽太は、夏休みを利用して、道の清掃を手伝っていた。
「なあ、陽太。ここに『髪長姫』の神社があるの知ってるか?」
「知ってるさ。何回か始業式や地域の祭りで誘われたけど、一度も行ったことないよ」
「あそこの話、最近聴いたか? なんでも、夜中に『髪を大切にしなさい』と言いながら流れるように髪が繋がる声が聞こえるんだって」
陽太は一瞬顔を詰めた。
「そんな話があったのか? 何から始まったんだ?」
和輝は若干声をひそめて迷惑そうにしたが、気になる表情の陽太に覚悟を決めたように話し始めた。
「昔、この町に髪長姫と呼ばれる女性が住んでいたんだ。かなり美しい人だったというが、よく人間を呪う。特に、他人が髪を切ることを楽しんでいるようだった」
その後も神社の呪いは続いた。髪を切った者が身体中に汚い流れを感じるようになり、本当に身体から髪が流れているような痛みを味わうと言う。
そして柔らかい髪が地面を広がる様に流れ、居なくなるまで追いかけてくる。その中に「流れる髪を止めて、呪文を放てはならぬ」という声が鳴り響いているのを聞いた者もいる。
陽太と和輝はその話を聞き、また神社を見に行った。夜中、そこには大量の髪が地面を裏打つように広がっていた。
「だれか...髪を...つないで...」
そんな声が聞こえた。陽太はその声の主を探そうとしたが、そこにはただ流れるような髪の流れがあるだけだった。
両人は神社から逃げ出したが、それからも他の地域で髪が動くような説が増えていった。
この町には今も髪長姫の呪いが生きているのだろう。

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