鏡の呪い

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鏡の呪い

鏡の呪い

古びた神社の奥に、一枚の呪われた鏡が封印されているという。誰もその鏡を覗いてはいけない。それを見た者は、鏡の世界に引きずり込まれるという伝説があった。

「こんな田舎に、そんな怖いものがあるわけないよ。」

大学生の高橋翔太は友人の佐々木裕也と山奥の廃神社を訪れた。彼らはオカルト好きで、都市伝説の検証を趣味にしていた。

「でもさ、この神社、本当に不気味だな…」

裕也が周囲を見回すと、朽ちた鳥居の奥に黒ずんだ社がひっそりと佇んでいた。

「行こうぜ。どうせただの鏡だろ?」

翔太は懐中電灯を手にし、社の扉を押し開いた。

中は埃まみれで、かび臭い匂いが漂っていた。奥の祭壇には、布で覆われた大きな鏡があった。

「これか…」

翔太が布を引き剥がすと、そこには不気味な鏡があった。表面はひび割れており、かすかに黒い影が揺らめいているように見えた。

「なんか…見ちゃいけない気がする…」

裕也が後ずさるが、翔太は鏡をじっと見つめた。

すると——

鏡の中の自分が微笑んだ。

「!?……今、俺、笑ったか?」

「いや…お前の顔、無表情だったよ…」

二人は凍りついた。鏡の中の翔太は勝手に動いていた。

「……こっちに来い。」

鏡の翔太が囁いた瞬間、部屋の空気が凍りついた。鏡の中から黒い手が伸び、翔太の腕を掴んだ。

「うわあああ!!」

翔太は叫び、裕也が必死に引っ張った。しかし、翔太の体は徐々に鏡の中へと引きずり込まれていった。

「助けて!!裕也!!」

裕也は手を伸ばしたが、翔太の体は完全に鏡の中へと消えた。

「翔太…?」

鏡には翔太が立っていた。しかし、それは明らかに別の何かだった。

「おい、裕也。俺だよ。」

翔太の顔はどこか歪み、笑っていた。

「違う…お前は翔太じゃない!!」

裕也は震えながら後ずさった。しかし、鏡の翔太がゆっくりと鏡の外へと歩き出した。

「俺は、もう外に出られるんだ。」

「嘘だ…翔太は…!」

鏡の翔太が裕也の肩に手を置いた。その瞬間、裕也の頭の中に無数の囁きが響いた。

「……こっちにおいで……」

「やめろ!!」

裕也は必死に逃げ出し、神社を飛び出した。

それから数日後——

翔太の家族は彼の失踪を届け出たが、行方はわからなかった。

しかし、裕也は知っていた。翔太はまだあの鏡の中に囚われている。

そして、あの偽りの翔太は、今もどこかで誰かを引きずり込む機会を狙っているのだ——。

裕也は悪夢に悩まされるようになった。夜になると、夢の中で鏡の翔太が現れ、何度も彼の名前を呼ぶ。

「裕也…お前もこっちに来いよ…」

夢の中では、翔太はずっと鏡の中で苦しんでいた。周囲は無限の暗闇に包まれ、どこにも出口はない。

裕也は何度も目を覚まし、汗をびっしょりかいていた。

「もう一度…神社に行かなきゃ…」

彼は意を決し、再び廃神社へと足を運んだ。

「翔太を助ける方法があるはずだ…」

彼は神社の奥で見つけた古びた巻物を開いた。

『鏡に囚われし魂を救うには、夜明け前に再び鏡を覆い、呪文を唱えるべし』

裕也は急いで神社へ戻り、鏡の前に立った。翔太がそこにいた。

「助けてくれるのか…?」

翔太の声は苦しげだった。

「もちろんだ…!」

裕也は鏡を布で覆い、古い呪文を唱え始めた。

その瞬間、鏡が激しく揺れ、苦しげな悲鳴が響き渡った。

「ギャアアアア!!!」

鏡の表面が黒く染まり、やがて静寂が訪れた。

裕也が恐る恐る布を取ると——

翔太が鏡の中にいなかった。

彼は助かったのだろうか?

しかし、裕也はふと背後に気配を感じた。

振り向くと——

そこには、翔太が立っていた。

「ありがとう、裕也。」

しかし、その顔は歪み、目が真っ黒だった。

「やっぱり…俺の代わりが必要だったんだ。」

鏡の呪いは、終わっていなかった——。

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