学校の夜
学校の夜
東京の都市のはずれにある古い校舎。そこは、かつて夜なると奇妙な声が聞こえると話題になった学校だった。
ある日の夜、高校生の小林は友人のリオとハルカと一緒に学校に潜入してみることにした。
「夜の学校は本当に怖いのかな。」
リオがウキウキしながら言った。
「さあ、誰かの声が聞こえるとか言われているけど。」
ハルカは頭を振りながら笑った。
その場所は静かだった。でも、歩き出すとギシギシという音が広い校舎に響いた。
リオが手元のライトで前を照らすと、教室の窓がふとあるときギリビクッと揺れた。
「今の、見た。」
リオの声が揺れていた。すぐさま小林とハルカも見ると、窓の向こうに薄く流れる魔のような影。
「だれかいるのか?」
小林が動き出し、教室のドアをそっと張る。しかしそこには誰もいなかった。
しかしなぜか、いつのまにか教室の反射鏡には三人の傾いた姿とある一人の姿がうっすら映っていた。
「逃げろ!」
リオの叫び声で三人はあわてて校舎を飛び出した。
しかし、それは始まりに過ぎなかった。
「ねえ、なんかおかしくない?」
校門に向かって走りながら、ハルカが息を切らしながら言った。
「おかしいって何が?」
リオが振り返る。
「…さっきから、出口にたどり着けてない。」
ハルカの言葉に小林も気づいた。確かに、もう十分以上走っているはずなのに、校舎の外には出られない。まるで、同じ廊下を何度もループしているかのようだった。
「嘘だろ……こんなの、ありえない!」
リオが焦りながら壁を叩く。すると、その音が異様に反響し、まるで誰かが壁の向こうで叩き返しているように感じた。
「おい、やめろ……なんかいる……」
小林が震える声で言う。すると、壁の向こうからカタカタと音が聞こえてきた。まるで何かが這いずり回っているような音だった。
「……誰かいるの?」
ハルカが恐る恐る壁に手を触れた瞬間——
「ギャアアアアア!」
突然、彼女の背後の扉が激しく開き、中から青白い手が伸びてきた!
「逃げろ!!!」
小林が叫び、三人は再び走り出した。しかし、逃げても逃げても出口は見えない。むしろ、いつの間にか教室の中に戻っていた。
「なんで……?ここ、さっきの教室じゃないの?」
リオが震えながら言った。
教室の中には古びた机と椅子が並んでいた。しかし、その中に、一つだけ不自然なほど新しい椅子があった。
「座って……」
どこからともなく、囁くような声が聞こえた。
「な、なんだよ……今の……」
ハルカが恐怖に満ちた顔で周りを見渡す。しかし、誰もいない。だが、声は確かに聞こえた。
「座って……一緒に……」
ゾクリと背筋が凍るような感覚が三人を襲った。
「もう無理……ここから出よう……!」
小林が決意したように教室のドアを開ける。しかし、その先には——
黒い闇が広がっていた。
「……え?」
まるで、ドアの向こうが奈落になってしまったかのようだった。どこまでも続く深い闇。その中に、いくつもの白い手が蠢いていた。
「だめだ!!!」
リオが小林を引き戻した瞬間——
ズルッ!
小林の足元に白い手が絡みついた!
「うわあああああ!!!」
彼の叫び声が響く。ハルカとリオが必死に彼を引っ張る。しかし、その手は異常なほどの力で小林を引きずり込もうとしていた。
「嫌だ……助けて……!!」
小林の体が少しずつ闇に飲み込まれていく。
「お願い……返して……」
リオが泣き叫びながら叫んだ瞬間——
「ガタン!」
突然、黒板の上に置かれていたチョークが床に落ちた。
その瞬間、まるで時間が止まったかのようにすべての音が消えた。
次の瞬間——
「……はっ!」
気がつくと、三人は学校の正門の前に立っていた。
「……え?」
ハルカが周囲を見渡す。しかし、さっきまでの異様な校舎の中ではなく、いつもの学校の夜の景色が広がっていた。
「夢……だったの?」
リオが呆然と呟く。
「……いや、これは……」
小林がハッと自分の腕を見た。そこには、青白い指の跡がくっきりと残っていた。
「……終わってない……?」
三人は無言のまま、夜の静けさの中に立ち尽くした——。
(終)

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