座敷童のいたずら

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座敷童のいたずら

座敷童のいたずら:古い旅館の怪異

東北地方の山奥にある老舗旅館「桜葉亭」は、江戸時代から続く格式高い宿である。この旅館には古くから奇妙な噂があった。「座敷童が棲んでいる」というのだ。

ある晩、東京から来た若いカップル、翔太と美咲は、この旅館に宿泊していた。木造の廊下を歩きながら、美咲は不思議そうに壁の古い掛け軸を見つめた。

「ねえ翔太、ここって本当に座敷童が出るの?」

「さあな。でも、座敷童が現れると商売繁盛するっていうし、悪いものじゃないらしいよ。」翔太は笑いながら答えた。

その夜、二人が布団に入ってしばらくすると、不意に襖が「すーっ」と開いた。翔太は驚いて身を起こしたが、そこには誰もいない。

「風かな?」彼は首をかしげたが、美咲は布団をぎゅっと握りしめた。「なんだか、変な気配がする…」

次の瞬間、二人の枕がふわりと宙に浮いたかと思うと、ドサッと床に落ちた。

「え!?何これ!?」美咲は悲鳴を上げた。

翔太は急いで部屋の明かりをつけた。しかし、室内には彼ら二人だけ。風の気配もなく、静まり返っていた。

「まさか、本当に座敷童の仕業…?」

その時、ふいに部屋の隅から「くすくす…」という子供の笑い声が聞こえた。二人は顔を見合わせ、凍りついた。

翌朝、旅館の女将にこの話をすると、彼女はにこやかに微笑んだ。

「それはきっと、座敷童のおいたずらですね。この旅館を気に入った証拠ですよ。」

二人は半信半疑だったが、東京へ戻った後、翔太の会社は大口の契約を取り、美咲の店も繁盛するようになった。まるで座敷童の加護を受けたかのように。

それ以来、二人は毎年「桜葉亭」に訪れるようになった。しかし、いつ行っても座敷童の姿を見ることはなかった。ただ、どこからともなく聞こえる「くすくす…」という笑い声だけが、変わらず彼らを迎えてくれるのだった。

ある年、二人は親友の佳奈と達也を誘って、再び桜葉亭を訪れた。初めて訪れる二人は、旅館の雰囲気に驚いた。

「すごく趣のある旅館だね。でも、本当に座敷童が出るの?」佳奈は半信半疑で尋ねた。

「前回来たとき、不思議なことがたくさんあったんだ。枕が勝手に動いたり、子供の笑い声が聞こえたり…」美咲が説明すると、達也は笑いながら「そんなの、ただの気のせいだろう」と言った。

その夜、四人は遅くまで話していたが、時計が午前二時を回った頃、突然障子が「すーっ」と音を立てて開いた。

「えっ…?」佳奈が顔をこわばらせた。

その瞬間、部屋の隅に小さな影がちらりと動いたように見えた。翔太が急いで電気をつけたが、そこには何もいなかった。

「やっぱり気のせいじゃないみたいだな…」達也は神妙な顔でつぶやいた。

その後も不可解な現象は続いた。夜中に足音が廊下を走る音が聞こえたり、布団の中からひんやりとした小さな手が伸びてきたり…。ついには、佳奈のスマートフォンのカメラに、ぼんやりとした子供の姿が映り込んだのだった。

翌朝、恐る恐る女将にその写真を見せると、彼女は静かに頷いた。「ええ、それはきっと座敷童ですね。この旅館に棲む子は、人に害を与えることはありません。けれど、気に入られたなら、きっと良いことが続くでしょう。」

東京へ戻った後、佳奈と達也にも幸運が訪れた。佳奈は念願だった職業に就き、達也の家族の事業もうまくいくようになった。もしかすると、座敷童が彼らに微笑んでくれたのかもしれない。

以来、四人は毎年「桜葉亭」を訪れた。しかし、座敷童の姿を直接見ることはなかった。ただ、旅館の片隅から響く「くすくす…」という笑い声だけが、彼らを迎え続けていたのだった。

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