戦国時代の亡霊
戦国時代の亡霊
深夜、大学生の田中翔太は、友人の村上悠人と共に奈良県の山奥にある廃寺へと足を踏み入れた。そこは戦国時代の戦で多くの兵が命を落とした場所だと言われている。
「おい、本当にここに入るのか?」
悠人が不安そうに囁いた。
「当たり前だろ。昔の武士の亡霊が出るって噂を聞いたからな。ちょっと探検しようぜ。」
翔太はスマホのライトを照らしながら、荒れ果てた寺の中へと進んだ。床板は朽ち果て、壁には黒い煤のような跡が残っている。
「この寺……戦火に巻き込まれたのか?」
悠人が呟いた。その時、不意に冷たい風が吹き抜け、二人は身震いした。
「うっ……今の風、ただの風か?」
翔太が言い終わるか終わらないかのうちに、どこからかかすかな声が聞こえてきた。
「た……す……け……」
二人は顔を見合わせた。
「聞こえたか?」
「……ああ。」
翔太はライトを奥へと向けた。そこには血に染まった鎧を纏った男が立っていた。顔は影に隠れ、その瞳だけが異様に光っている。
「うわっ!」
悠人が後ずさると、亡霊の口が動いた。
「……なぜ……逃げる……?」
その声は、まるで怨念に満ちていた。
「俺たちは、ただ……」
翔太が言い訳をしようとした瞬間、亡霊の手が伸びた。その指はまるで骨のように冷たく、翔太の腕を掴んだ。
「戦の……苦しみを……思い知れ……」
次の瞬間、翔太の意識は暗闇へと引きずり込まれた。
目を開けると、そこは戦場だった。血と火の匂いが漂い、無数の武士が刀を交えている。
「な……なんだ、ここは!」
翔太は驚いて辺りを見回した。すると、鎧を纏った男が彼の前に立ち、無言で刀を突きつけた。
「お前も、戦え……」
刀を握らされた瞬間、翔太の体が勝手に動き出した。彼はまるで武士のように戦い始め、次々と敵を斬り伏せた。しかし、どれだけ斬っても終わりが来ない。
「やめろ……! 俺は戦いたくない!」
だが、声は届かず、翔太は永遠に戦い続けるしかなかった……。
一方、悠人は気を失った翔太を必死に揺り動かした。
「翔太! 目を覚ませ!」
しかし、翔太は何かをぶつぶつと呟きながら、宙を斬るように腕を振っていた。
「戦え……戦え……俺は……」
悠人は恐怖に震えながらも、必死に翔太を引きずり寺の外へと走った。すると、不気味な声が響いた。
「貴様らも……逃がさぬ……」
寺の中から無数の影が迫ってきた。
悠人は全力で走った。背後で何かが追いかけてくる音がしたが、振り返る勇気はなかった。
ようやく山を抜け、街の灯りが見えた瞬間、翔太はハッと目を覚ました。
「……俺は……生きてるのか?」
悠人は息を切らしながら頷いた。
「もう二度と……あんな場所には行かない。」
しかし、二人の背後では、甲冑を纏った亡霊たちがじっとこちらを見つめていた……。
翌日、翔太は熱にうなされながら目を覚ました。昨夜の出来事は悪夢だったのか?そう思いながらスマホを手に取ると、見知らぬ番号からメッセージが届いていた。
「お前は……まだ戦を終えていない……」
翔太の手からスマホが滑り落ちた。その瞬間、部屋の隅から甲冑姿の影がゆっくりと現れ、彼を見つめていた……。
「戦え……永遠に……」
翔太は叫び声を上げ、布団を蹴飛ばして後ずさった。しかし、影は消えなかった。むしろ、ゆっくりと彼に近づいてくる。
「悠人……助けてくれ……!」
翔太は震える指で悠人に電話をかけた。コール音が鳴る。しかし、悠人の声ではなく、昨夜の亡霊の声が響いた。
「貴様も……戦場へ……戻るのだ……」
その瞬間、翔太の視界は再び真っ暗になり、気づくと彼はまた血に染まった戦場に立っていた……。
永遠に終わらない戦いの中で。

コメントを投稿