呪われた人形
呪われた人形:恐怖の日本怪談
日本の山間にある小さな町「霧影町」には、古い洋館に置かれた「呪われた人形」の伝説があった。その人形に触れた者は奇妙な現象に見舞われ、ついには姿を消すという噂だ。
大学生の彩花(あやか)は、心霊研究会の仲間である直樹(なおき)と恵美(えみ)と共に、この人形の謎を解明するために霧影町を訪れた。彼らが目指すのは町外れの古びた洋館、「白菊館」だった。
「本当にここなの?」恵美が不安そうに尋ねた。
「間違いない。資料に載ってた場所だ。」直樹が地図を見ながら答える。
「行こう。もう後戻りはできないよ。」彩花が息を飲んで扉を押した。
扉が軋む音を立てて開くと、かび臭い空気が流れ出した。暗い廊下の奥に、人形が並ぶ部屋が見えた。中央にはガラスケースに収められた着物姿の日本人形があった。白い肌に赤い唇、黒い瞳が彼らを見つめている。
「これが…呪われた人形?」彩花が囁くように言った。
「そうだと思う。」直樹が写真を撮ろうとカメラを構えた。
「ちょっと待って…人形が…」恵美の声が震えた。
三人が人形を見つめると、その瞳がわずかに動いたように見えた。次の瞬間、館の奥から微かな笑い声が聞こえた。
「…いらっしゃい…」
「誰だ?!」直樹が叫んだが、返事はない。壁の時計が午前二時を告げる音が響いた。
「もう帰ろうよ…」恵美が後退りする。だが、突然、ドアが勢いよく閉まり、鍵がかかった。
「閉じ込められた?」彩花がドアを引くが、びくともしない。
「奥を調べるしかないな。」直樹が懐中電灯を握りしめる。
三人は人形の部屋を抜け、奥の部屋へと進んだ。廊下の先に「資料室」と書かれた部屋があった。扉を開けると、古い新聞記事が散乱していた。
「これ…見て。」彩花が指さした記事には「白菊館の人形、少女を呪う」という見出しがあった。記事にはこう書かれていた:
『昭和十年、白菊館の主人・藤村家の娘・桜子が贈られた人形と遊んでいた際、突然姿を消した。その後、部屋にいた人形の口元が微かに笑っていたという証言が残る。』
「桜子ちゃんが人形に…?」恵美が呟いた。
「でも、なぜ?」彩花が首をかしげた瞬間、背後で足音がした。
三人が振り返ると、人形が部屋の入口に立っていた。先ほどケースにあったはずの人形だ。口元が笑っている。
「遊びましょう…」
「逃げろ!」直樹が叫び、三人は部屋を飛び出した。廊下を走る中、壁の鏡に人形の姿が映っている。人形は着実に追いかけてきていた。
階段を駆け下り、玄関に着くとドアが再び開いていた。三人は外に飛び出し、全力で走った。後ろを振り返ると、白菊館の窓に人形が立ち、こちらを見下ろしていた。
翌日、三人は地元の資料館を訪れ、白菊館の記録を調べた。すると、人形には魂が宿っていたことがわかった。桜子の寂しさが人形に乗り移り、新たな「友達」を求めていたのだ。
「供養しなきゃ…」彩花がつぶやいた。
その夜、三人は白菊館の前で人形を供養した。読経が終わると、人形の顔が安らかな表情に変わり、霧の中に溶けて消えていった。
「終わったんだね…」恵美が涙ぐんだ。
しかし、数日後、彩花の部屋の隅に見覚えのある人形が立っているのを見つけた。人形の口元は微かに笑っていた。
「遊びましょう…」
彩花はその場に座り込んだ。心臓が早鐘のように打つ。携帯を取り出して直樹に電話をかけた。
「直樹…あの人形が…いる…」
「何だって?今すぐそっちに行く!」
直樹と恵美が駆けつけると、部屋の床にはびっしりと「遊ぼう」という文字が刻まれていた。そして、彩花は無表情で人形を抱いていた。
「彩花!」直樹が声をかけると、彩花がゆっくり顔を上げた。瞳が黒く淀んでいる。
「…遊びましょう…」人形と同じ声だった。
直樹は背筋が凍るのを感じた。
「人形が彼女を支配している…」恵美が泣き叫んだ。
「もう一度供養だ!」直樹は人形を奪い取り、近くの神社へ駆け出した。人形は激しく暴れ、彩花は後を追ってきた。
「返して!私の友達!」彩花が叫ぶ声が響いた。
神社に着くと、宮司が読経を始めた。人形の目から黒い涙が流れ、耳をつんざく悲鳴が響く。やがて、人形はひび割れ、灰となって崩れた。
彩花はその場に崩れ落ち、瞳に光が戻った。
「終わったの?」
「うん…終わったよ。」直樹が力なく答えた。
霧影町の白菊館は後日、取り壊された。しかし、その土地に新たに建てられた公園の片隅に、髪の長い人形が座っているのが目撃されている。
「遊びましょう…」その声を聞いた子供たちは、不思議な夢を見るのだという…。

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