橋の上の怪

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橋の上の怪

橋の上の怪:深夜の恐怖体験

日本の古い町、山間にひっそりと佇む「霧ノ村」には、古くから「橋の上の怪」という不気味な伝説が語り継がれていた。その橋は「黄泉橋」と呼ばれ、夜中にその橋を渡ると見知らぬ女が現れ、声をかけられたら決して答えてはいけないという。

大学生の涼介(りょうすけ)は、友人の達也(たつや)と美咲(みさき)と共に、その噂の橋に肝試しに行くことにした。夜中の午前2時、三人は懐中電灯を手に黄泉橋に向かった。

「ここが黄泉橋か…」涼介が呟いた。
「思ったより普通の橋だな。」達也が笑う。
「でも、この冷たい空気…何か嫌な感じがする。」美咲が腕を抱えた。

三人は橋を渡り始めた。月明かりが橋を照らし、川面に揺れる影が異様な雰囲気を醸し出している。

橋の中央に差し掛かった時、突然、背後から足音が聞こえた。カツ、カツ、カツ…。三人は息を呑み、同時に振り向いた。

そこには白い着物を着た女が立っていた。髪は長く、顔は影になって見えない。

「こんな夜更けに…どちらへ?」女が冷たい声で問いかけた。

美咲が震えながら涼介の袖を掴んだ。涼介の頭に伝説がよぎる。「声をかけられても決して答えてはいけない。」

達也が無言で女を睨みつけたが、その目には恐怖が滲んでいた。女は再び口を開く。

「答えて…どこへ行くの?」

その声に誘われるように、達也が口を開いた。「ただの肝試しで…」

「達也!ダメだ!」涼介が叫んだ瞬間、女の顔がギクリと動いた。髪の間から覗いた顔は青白く、口が裂けるほどに笑っていた。

「見つけた…」

女がそう言うと、達也の体が橋の下に引きずり込まれた。彼の悲鳴が闇に響き、次の瞬間、水音だけが残った。

「逃げろ!」涼介は美咲の手を引き、橋を駆け抜けた。後ろからカツカツと足音が追ってくる。女の声が響く。

「逃がさない…次は…あなた…」

ようやく橋を渡り切ると、足音がぴたりと止まった。振り返ると、女は橋の中央に立ち、ゆっくりと消えていった。

翌朝、地元の警察が川を捜索したが、達也の姿は見つからなかった。しかし、橋の上には濡れた足跡が残っていたという。

その後、涼介は調べた結果、この黄泉橋では過去にも同じように「肝試し」で訪れた若者が姿を消していたことを知る。そして、失踪した者たちは皆、声をかけてしまったという共通点があった。

「橋の上の怪」は今も霧ノ村の黄泉橋に現れる。夜中に「どこへ行くの?」と問われても、決して答えてはならない。それが、生死を分ける一言なのだから。

あなたがもし、この橋を渡る時、背後から足音が聞こえたなら…決して、振り向かないでほしい。

それから数週間後、涼介と美咲は達也の失踪後、悪夢に悩まされていた。夜中に水音が聞こえ、橋の上に立つ女の姿が夢に現れるのだ。涼介は決心して再び橋に向かうことにした。
「真実を知りたいんだ。」涼介が言うと、美咲は不安そうに頷いた。

再び深夜2時、黄泉橋に立つ二人。冷たい霧が橋を包んでいる。
「達也…いるのか?」涼介がつぶやくと、川面からぼんやりと人影が浮かび上がった。
「涼介…助けて…」水面に達也の顔が現れた瞬間、背後からあの足音が響いた。

カツ、カツ、カツ…。二人が振り返ると、白い着物の女が立っていた。
「やっぱり来たのね…次は…どちらが…?」女の笑みが深まる。涼介は美咲の手を引き、再び逃げ出した。橋を渡り切り、村の祠に駆け込むと、女の声が遠のいていった。

後日、村の神主に話を聞くと、その女は昔、愛する人を橋の上で待ち続けた末に命を落とし、以来、魂が彷徨っているという。愛する人を探し続け、声をかけるのだと…。
「だから答えてはいけない。答えたら、その人が連れて行かれる。」神主はそう告げた。

涼介と美咲はその夜、達也のために供養を行った。しかし、霧ノ村では今も黄泉橋の怪異が続いている。深夜に橋を渡る時、背後から足音が聞こえたなら…どうか、振り向かないでほしい。

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